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第二話「クラス表」


回りには多くの女子中学生が集まっている。
それもそのはず今日はこの学校、麻帆良学園の入学式なのだ。
この学校はイベントは外が晴れである限り外でおこなうらしい。
桜の舞う校庭での入学式、私にとってこんなに思い出に残る入学式はないだろう。
そんな風に思っているのは私だけではないらしく、風に乗ってくる話声にここの風習を評価する声も多々ある。
「まあ、夏場は地獄のような気がするけど。」
私は心に思った嫌な点をボソリとつぶやく。
しかし、人が多い。
この学園に入って人が絶えている道を見た事が無いのだ。
まったくあの人達がいなければ確実に迷子になっていただろう。
回りを見渡しながら思いにふけっていると不意に服が引っ張られる感じがして振りかえると、近衛さんがいた。
「近衛さん、どうかしましたか?」
服を引っ張ったということは私になにか用事があると言うことだ。
答えるとにこっと笑顔を作り話掛けて来た。
「えっとなー、生野さんとりあえずあっちいかへん? 人多いし。」
近衛さんが指す方向には桜の木の下にあるベンチがあった。
なんか、この場に取り残されたような雰囲気だ。
しかし良く見るとカバンが置いてある。
あれは近衛さんのカバンのはずだ。
「場所とってくれたの? ありがとう。」
私は近衛さんの心使いにたいして感謝の言葉をかけベンチに歩きよる。
近衛さんは、なにかさっきのお礼が気恥ずかしかったのか。
「えへへへー。」
顔を赤らめながら私の後ろをついてきた。
ベンチのカバンを取り座る。
それに継いで近衛さんも横に座る。
同じにカバンを近衛さんに返す。
「はい、ありがとう。 でもカバンの置きっぱなしは物騒だと思うよ。」
返しながら近衛さんに注意を促す、しかしこれが彼女のいい所なのだというのは最初からわかっていた。
それを聞いた近衛さんは少し不思議そうな顔をした後にっこり笑った。
「私の心配してくれてありがとなー。 なんか生野さんってなんか不思議やー。」
近衛さんはそういって嬉しそうに私の顔を見る。
「えーと、不思議ってなにがかな?」
彼女の意図が理解できず聞き返す。
私のどこが不思議なのかなー?
彼女は何か考えるそぶりをした後、私にこう言った。
「なんかなー、やさしーんや。 こう、今舞っている桜みたいになー。」
言い終わると空を見上げ桜が落ちる様を眺める。
しかし、私は彼女意図は説明されても理解できなかった。
いったいなにが言いたいんだ?
うーん、どうしよう。
と私が気難しい顔をしていると。
「あー、そうやー。」
近衛さんが何かを思いついたように手の平を叩く。
にこやかにこちらを向いて彼女は目を輝かせていた。
「ど、どうしたの近衛さん?」
さ、流石に私も彼女のペースにはついて行けないらしい。
返事は普通にしようと思ったのだが体が言うことを聞いてくれない。
「それや! わたしのことは近衛やのーて、木乃香ってよんでーな。」
彼女は怒ったような、期待に満ちたような顔で行ってきた。
最初は私もいきなり名前で呼ぶのは同かと思いはしたが彼女が望んでいることだ。
拒否する方が失礼だろう。
そして何より彼女は私を友達と見とめているからこそ名前で呼ばれることを望んだのだろう。
ならば期待に答えねば。
「そうだね、木乃香。 私達もう友達だもんね。」
私は笑顔で彼女の期待に答えた。
そして彼女も嬉しそうに
「そや! 友達や海里ー。」
また一つ木乃香のことがわかった気がする。
彼女はただ真っ直ぐなのだ、人を疑うことも、嫌うこともせず。
ただ純真なのだ。
なんとなくそんな気がした。
彼女と打ち解けた一瞬、ほんの一瞬、何か鋭い視線を感じた気がした。
その方向に目をやると、黒髪のほとんどを髪を左にまとめ竹刀してはちょっと長い気がする竹刀袋を持った少女が私を睨んでいた。
目が合う、彼女は瞳をそらさず私の瞳を見つめ返す。
ふと、となりから聞こえる木乃香の声で我に返る。
「どうしたん? なんか向こうに知った人でもおったん?」
木乃香も私に習ってその方向をむくと
「あっ、せっちゃん。」
と短く声を上げると同じに立ち上がる。
木乃香の知り合いなのだろうか、しかしその少女は木乃香が立ちあがると人ゴミに消えていった。
しかし、木乃香はその少女を追う様に歩き出そうとする。
私も立ちあがり木乃香に質問をする。
「さっきの木乃香の知り合い?」
私が声を掛けると歩む足を止めそのまま静かにうなずく。
その詳細を聞こうと思ったその時、後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。
「木乃香ー、生野さーんクラス表取ってきたわよー!!」
神楽坂さんだ、ここに来る際面倒なことは私がやると言って飛び出していったのだ。
そして私と木乃香はここでボーっと待つことになったのだ。
木乃香は神楽坂さんの声が聞こえなかったのか、それとも人ゴミに消えた少女を気にしているのかその場で立ち尽くしていた。
「木乃香、神楽坂さんがクラス表取ってきったてよ。」
肩に手をおき木乃香に話しかける。
「あ、うん。 海里ありがとう。 アスナも面倒をごめんなー。」
木乃香はさっきのことを振り払うかの用に笑顔でお礼を言う。
なぜか私にはその笑顔が痛々しく見えた。
「ん? 木乃香に海里?」
神楽坂さんがさっきの会話に違和感を覚えた場所を言いながら寄ってくる。
「あー、私達友達になったんよー。」
木乃香が嬉しそうに手をつないで見せる。
「あわわっ。」
流石に他人の目の前でこんなことされると恥ずかしい。
すると神楽坂さんは驚いたような顔をしたあと納得した顔になって
「じゃあ、私も友達よね海里。」
私にむかってウィンクをしてきた。
私もアスナにむかってウィンクをしながら
「ええ、よろしくアスナ。」

そしてクラス表を一枚しか取って来れなかったので3人で同じに見ようとした時だった。
真横から丁度アスナの持っているクラス表の当りに火炎の弾が飛んできた。
「へっ?」
「えっ?」
「はっ?」
3人とも目を点にしながら状況を把握しようとする。
まあ、アスナの手には半分以上千切れ、更に燃えているクラス表が一枚あるだけ。
まあ、私はそれを確認するだけで精一杯。
2人もその様だ。
火がアスナの手に近づき熱さでやっと我に返り手を離すアスナ。
「うわっちゃ!!」
アスナは手を振り火の粉と化したクラス表を払う。
「だ、だいじょうぶやアスナ!!」
「大変、み、水? 水!!」
私達2人は慌てアスナに近寄り安否を確認する。
しかし、アスナの運動神経のおかげか焼けどや服が焼けている部分はなかった。
一息つこうかとしていると火の弾が飛んできた方向から重苦しい重量音が聞こえてくる。
「な、今度は何!?」
アスナは身構えながらその方向を見つめる。
私達もアスナに習ってその方向をみるとそこにあったのは。
「「「ロ・ロボット!?」」」
まあ、なんと言うかこうビーム○イフルやビーム○ーベルを思い出す私は結構ロボット好きなのかなあーと思った。
「ごめんなさいですー、これ変わりのクラス表です。」
間延びした声と共にコックピットらしき所から大きな目がねを掛けた少女がクラス表を渡してきた。
アスナと木乃香は固まっていたので、私はかろうじて手と口を動かしクラス表を受け取りお礼を言った。
「いえいえ、元は私の責任ですしー。 では、同じクラスになればまた会いましょうー。」
と言って、ロボットと少女は去っていった。
「な、なんっだったん?」
木乃香は目を白黒させながら言う。
「「さ、さあ?」」
私達2人も空返事をするだけで精一杯だった。
まるで台風が過ぎ去った後のようだ。
私達が呆けていると後ろから笑い声が聞こえた。
「アハハハ、災難っだったねー3人とも。」
それで、ようやく我に返り後ろ向くとショートカットの男らしい顔つきの女の子が立っていた。
ショートッカトというよりおかっぱに近いかな?
「ああ、気に障ったらゴメンね。 悪気はないんだ。」
女の子は笑うのをやめて、笑っていたことを謝る。
「いや、多分私でも笑ったと思う。」
私は素直に彼女の意見に賛同した。
すると、他のふたりも。
「私も、笑うなーきっと。」
「私もや。」
2人ともさっきの状況がおかしかったのか思いだし笑いをしている。
「なんか、いいコンビだねー私らみたいだ。」
女の子はそう言って。
「と、私の名前は釘宮 円よろしくね。 友達待ってるから君達の名前はまたあとでね。」
と言って走り出す。
「あ、そう言えばはよクラス表見らんと。」
木乃香が思い出したように言う。
「あ、そうだハイこれ。」
私はもらっていたクラス表をアスナに渡しアスナの横からクラス表を覗く。
私と木乃香が自分の名前を探している間にアスナが誰かの名前を見つけたのか声をあげた。
「あった!! しかも3人とも発見!!」
喜びの声が上がる、それはすなわち私達は同じクラスと言う事だ。
「どこ? どこや、アスナ!?」
「どこなのアスナ!?」
私も木乃香も興奮気味でアスナに問いただす。
「ちょっと待って、えーと「1ーA」だって。」
軽く、本当に軽く風が頬を撫でた感じがした。
桜も散らさないような優しく軽い風が私の頬を・・・
これが1−Aの出会いだった、これからハチャメチャ騒ぎに巻き込まれるとも知らず
私はアスナ、木乃香との同じクラスになった事を心から喜んだ。

別談
「さ、教室にいくわよ!!」
アスナが張りきって教室に向かおうと私達に背を向ける。
「「あ、焦げてる。」」
私と木乃香の声が重なる。
さっきの火の弾の影響はやはりあったようだ。
アスナの背中の制服の右肩あたりが温度による変色を果していた。
「ええーーーー!!!」
アスナが叫ぶ。
桜の木がざわめく、まるで私達の出来事を楽しく笑っているかのように。


第二話「クラス表」完